大手のインフラ企業からコンサルティングファームに転職して約2年が経過しました。
コンサルの仕事内容は、システム導入支援から戦略策定まで多岐にわたり、クライアントも自治体から自動車メーカー、病院等、業界・業種共に際限がありません。
また、コンプライアンス上、具体的な仕事内容が見えにくい業界でもあるため、実際に自分がコンサルとして働く姿がますます想像しにくいと思います。
そこで本記事では、私がコンサルティングファームで2年間働く中で、コンサルタントという職業に抱いていた印象と比べて「想定通りだった点」や「ギャップに感じた点」を紹介します。
想定通りだった点
能力面(アウトプット)のハードルがとにかく高い
ある意味想像を上回っていました。
若くしてコンサルティングファームに転職するような方は、やる気も前職での実績も十分で、かつ、「長時間労働」「ハードワーク」への覚悟はある程度できている人が多いと思います。
しかし、「能力面(=アウトプットの質)に自分が追いつけない可能性」を具体的に想定できているでしょうか。
コンサルティングファームでは事業会社とは比較にならないアウトプットの質・量を要求されます。クライアントから数百万~数千万円をもらい、それに見合ったアウトプットを数週間~数ヶ月のプロジェクト期間にきっちりと出さなくてはならないため、相当のプレッシャーを負うことになります。
そのため、事業会社で少し資料作成をかじっていた程度のレベルでは全く通用せず、一晩費やした自分のアウトプットが業界の期待水準を大きく下回っていることを、レビュー時のマネージャーの表情や口調、質問(詰めというやつです)の端々から感じました。
ちなみにここでいうアウトプットとは、スタッフ層であれば、エクセルでの定量分析、ワードでの議事録作成、パワーポイントでの資料作成等を指します。コンサル1年目では特に、これらのソフトの操作スキル、ロジカルシンキング、日本語の使い方をみっちりと仕込まれます。
入社1年以内に自ら高速でPDCAサイクルを回して業界水準のアウトプットを出せるようにならなければ「退職勧告」もありえます。実際に私と同時期に入社した30代の男性は入社6ヶ月でいなくなりました。
このように、コンサルでは自分の能力の低さを痛感し続け、優秀な新卒1年目と比較され続け、それを指摘され続けます。これは時に「長時間労働」や「激務」よりも数倍辛いものです。
ある程度想定できていたにも関わらずこの辛さでしたので、もっと舐めてかかっていたら今頃ここにはいないかもしれません笑
上司(マネージャー)の詰めが厳しい
これは少し調べるとすぐにわかると思いますが、とにかく上司(マネージャー)が厳しいです!
特に入社当初は、一言一句、行動の一つ一つ、資料の隅々までダメ出しをされました。「何でこう思ったの?」「それは単なる君の想像でしょ」「それを考えたとは言わないよ」「こんだけ時間かけてこれ?」などなど…
言われていることが至極正論なだけに辛いものでした。
事業会社の上司から理不尽に怒られているときの方がまだ心の安寧を保てていました。心のどこかで「俺の方が正しいのに」と悪態の一つでもつける余裕がありましたからね。笑
この厳しいレビューにより、ロジカルシンキングはもちろん、エクセルやパワーポイントの操作一つとってもコンサルが求める正確性・スピードに全く達していないことを日々思い知らされます。
前職では一応総合職として入社し、なんとなく周りからもエリート扱いされていたため、何も出来ないくせに口だけは偉そうなことを言っていました。
マネージャーに日々詰められながら努力もせずに過ごしていた自分を振り返り、恥ずかしくなったのと同時に「いつか完璧な仕事で黙らせてみせる!」と奮起したのを覚えています。
ギャップに感じた点
意外に事業会社よりも縦社会
コンサルティングファームと言えば、「実力主義」「ロジカルな人間の集まり」といったイメージが強いと思います。
確かにそういった面もあるのですが、一方でプロジェクトへのアサインや給与の増減の権限は直属のマネージャーに委ねられており、彼らは部下の処遇について事業会社よりも強い裁量を持っています。
当然人間が行う判断ですので、一度でも1人のマネージャーに嫌われてしまい「リスク人材」認定を受けると、そのマネージャーからの人事評価低下に直結することはもちろん、ほかのマネージャーからもプロジェクトアサインを敬遠されることとなります。
結果として自分のキャリアに結びつかない「どうしようもないマネージャーの炎上案件」にアサインされたりします、、
飲み会が思ったより多い
地味に辛かったのが、飲み会が思ったよりも多いということです。
クライアントの担当者が飲み好きということもあり、平日は少なくとも2日、多いときは毎日飲みに付き合わされました。
当時はクライアント先での常駐勤務でしたので(後述)、毎日退社時間が近づくと遠目から担当者がそわそわしはじめているのが見えます。そして、ゆっくりこちらのデスクに近づいてきてマネージャーと世間話をしはじめます。そうなると、ほぼ100%の確率で「今日、(飲み)行きます?」と尋ねます。
マネージャーも飲みが好きな男であり、クライアントからの飲みの誘いを断ることはほとんどありません。必然的に部下のわれわれはそれに付き合うこととなります。
クライアントファーストとはこういうことかと妙に納得したことを覚えています。
働く場所が自由じゃない
まず最初にアサインされたのが約10か月におよぶ長期プロジェクトでした。
クライアントはとある中堅企業で、1年後に新サービスのローンチを控えており、当社はプロジェクトチームのPMO(プロジェクトマネジメントオフィスの略。社内のプロジェクトを管理・統括する機能を果たす)として雇われていました。
勤務形態はいわゆる常駐で、クライアントのオフィスの一角を間借りし、毎日彼らの就業時間に合わせて出退社することとなっていました。
ここで私はいきなりの入社後ギャップに戸惑いました。
コンサルという仕事を選択した理由として、働く場所を選ばないリモートワークや働く時間を選ばない裁量労働への憧れが多少なりともあったからです。
せっかく転職までしたのに、これじゃ事業会社と変わり映えしない…これが1年弱続くのか…等々考えていました。
後で知ったことですが、昨今PMO需要の高まりにより、常駐勤務はコンサルには良くあることらしいですね。単なるリサーチ不足でした。
過去の自分より確実に成長できる
これまでどちらかというとネガティブなことばかり紹介してきましたが、これだけは言えます。
確実に過去の自分よりも成長できます。
正確には1年前の自分と比較してできることが圧倒的に多いということです。
これは転職前、無駄な自信に溢れていた時にも、マネージャーに詰められまくり、自分の力の無さに打ちひしがれていた時にも想定していなかったことです。
激務の中、一年前の自分がいくら時間をかけても出来なかった分析や資料作成をサクッと終えている自分に気づきます。
もちろん、自分の成長に気づいたときにはすでに、さらに途方もなく高いハードルが目の前に用意されているのですが。笑
これほどまでに自分のスキルの程度を日々受け止め、適切なフィードバックを百戦錬磨のビジネスマンから毎日浴びるようにもらえる仕事は他にはありません。しかも結構なお金をもらいながら!
悪くないでしょう?コンサルタント。
まとめ
これまで紹介した通り、コンサルティングファームでは、ひたすらに実力を上げることは当然のこととして、ある程度マネージャーの御機嫌を伺いながら時には媚びへつらうことのできる器用さ・メンタルが必要となります。
事業会社では、どちらか一方だけでもどうにか昇進できますが、コンサルティングファームでは常に両方が必要とされます。
この点がコンサルティングファームに転職してくる方がギャップを感じるところだと思います。
この記事がこれからコンサルティングファームに入社、転職を検討している人の参考になれば幸いです!
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